そう。それは北京の秋だったか、ロンドンの冬だったか。 朝の静寂の層を小鳥たちがついばむ中、細いスティック状のチョコレート菓子を一口、また一口と咀嚼していた。 チョコレート菓子は、41本の棒を使った日本発のゲームに由来してMIKADOと名付けられていた。
そう。 MIKADOの一本一本を咀嚼しつつ、目覚めたばかりのまどろむ思考は「日出づる国」の象徴へとスライドしていく。 そう。こうした「MIKADO」にみられるような単純なイメージの連鎖を展示空間において促進、破綻、消滅、回復させるのは、鑑賞者に読み込まれるだろう空間を境界付け、併走するパラテクストだ。 ただ、いままさにスマートフォンで綴られているこのパラテクストはどこかに向かうようで、どこにも向かわない(ことを宣言する)。
そう。無関係であるにもかかわらず、当たり前のようにイメージとテクストが戯れてしまう中、それぞれによるそれぞれの作品が古都の日本家屋で展開される。 そう。展覧会の只中にあるのは、キュレーションと展示、あるいはパラテクストとテクスト(空間)との間の透明性ではないが、真っ暗闇の夜の帳でもない。その夜の帳は幾千もの星星の瞬きにより無数に穿たれている。 視線は帳のあちらからこちらへ、こちらからあちらへと往来される(かもしれない)。
そう。 ロラン・バルトが「作者の死」の後、作者の「空間」をテクストに持ち込んだレベルでの私による仕掛けが張り巡らされている。今世紀最大の冗談の最中で書かれたこのパラテクストともに。それもまた無関係なのに。
島林 秀行 (本展企画)
京都市「まちじゅうアーティスト」対象事業
主 催|「MIKADO2」展実行委員会
助 成|公益財団法人 西枝財団
協 力|一般社団法人HAPS
企 画|島林 秀行
お問合せ|
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